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ヒットの構図 あのXXは何故ヒットしたのか(後編)

ヒットの構図 あのXXは何故ヒットしたのか(後編)

こんにちは社長です。
前回のBlogでは空前の大ヒットを記録した「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」を題材に、そのヒットの要因を考察してみました。

ヒットの構図 あのXXは何故ヒットしたのか(前編)

様々考えられる中で1点気になっている要因がある、と最後にお伝えしました。
今回はそこにフォーカスしたお話。
自分でハードル上げちゃってドキドキしてきました…。

■大ヒットの外部要因

『鬼滅の刃』が優れた作品であり、マンガ原作、深夜アニメと経る中で強力なアーリーアダプターを形成できた、という仮説はすでに書いた通り。
世の中でさんざん論じられたこととは思いますが、それ以外に考えられる外部要因として以下が挙げられています。

◯巣ごもり需要
いわゆる「巣ごもり需要」でマンガやアニメ等に接触する時間が増えたと考えられます。
特にメインターゲットとなる小中学生が通学できない時期が発生したことは見逃せません。

◯電子書籍と動画配信
一昔前と違い、本屋に行かなくても電子書籍で原作を読めます。
また放送時間帯的に不利と説明したTVアニメですが、実際にはネット配信による視聴者が多数いたはずです。
この状況は「巣ごもり」と相乗効果を成します。

◯スクリーン数
実に400館超という大規模な上映館が確保されました。
公開初日はその上映開始時刻が「山手線並」の頻度とまでネタにされましたね。
すでに人気爆発の予兆を見せていたことは当然ですが、加えてコロナ対策の影響から洋画を中心に大型の映画が他に無かったことも大きな要因と言われています。

◯コロナ禍におけるカタルシスたり得た快作
鬱屈とした空気の続き世の中にあって、主人公炭治郎や主要キャラ煉獄杏寿郎をはじめ、真っ直ぐで一途な人物たちの物語が、視聴者の心を晴らす痛快なカタルシスを生みました。
口コミによる「感動した」「泣いた」「すごかった」というストレートな感想が、多くの視聴者を映画館に運んだことでしょう。

■私が考えるもうひとつの要因

以上に加えて、わたしが重要だと感じている要因は、ズバリこれです。

”物語が完結したこと”

つまり、原作が完結したこと、していたこと、です。
どういうこと?
時系列に見てみましょう。

2019年 4月 アニメ1期 放映開始
2019年 9月 アニメ1期 放映終了 /劇場版 制作決定
2020年 4月 劇場版公開日決定
2020年 5月 原作連載終了
2020年 10月 劇場版公開
2020年 12月 最終巻23巻発売

『鬼滅の刃』はアニメ放送開始時には、原作は完結していません。
劇場版開始時には完結していましたが、単行本は未発売であり最終話をちゃんと楽しめたのは、掲載誌『週刊少年ジャンプ』を何らかの形で購読した人に限られます。
多くの人が完結を目にすることができたのは、まさに劇場版が空前のヒットを続けている、その「最中」です。
この意味について考えてみます。

■未完のものを人に勧められるだろうか?

見出しとしてしまいましたが、実は言いたいことはこれに尽きます。
考えてみてください。
自分がある作品を人に勧めるとき、完結しているものと、していないもの、どちらが勧めやすいでしょうか?
相手が、新しい物好き、アニメ好きの同年代の友人などであれば前者かもしれません。
「アレみてる?」「アレすごいよ」という感じですね。

では相手が例えば自分のお母さんだったら??
終わっていないと気が引けないでしょうか?
あるいは、世の中の評価が一定したもののほうが、勧めやすくないでしょうか?

■短い時間で完結しないものを人に勧められるだろうか?

視点を変えてみましょう。
あなたが人に勧めるとき、全23巻の漫画、全12話のTVアニメシリーズ、2時間で終わる(終わることが約束されている)映画、どれが一番勧めやすいでしょうか?

普段あまり漫画を読んだりしない人を想定して考えてみてください。
「映画」という答えが普通ではないでしょうか。
劇場版単体では完結しない、という問題を除いて考えれば。

■物語(体験)は「完結」してはじめてキャズムを超えられる

ここからは持論になります。

私は、体験として完結していないもの、現在進行系の体験はキャズムを超えられないと仮説立てています。
※キャズムの定義については前編を参照のこと
逆に言えば、未完結の体験にでも遠慮なく周囲を巻き込んでいける層を、イノベーター、アーリーアダプターと呼んでよいのでは。

流行がアーリーマジョリティまで波及するには、その体験が「完結する」ことが保証される必要がある、と考えます。
もう一度時系列に沿って『鬼滅の刃』の例を見てみましょう。

◯2019年 4月〜9月 アニメ1期 放映
この段階では原作ファンを中心としつつ「映像化された鬼滅」に対するイノベーター、アーリーアダプターが形成されます。

◯2020年 4月 劇場版公開日決定
ただし、劇場版の公開日が完結直前に公知され、公開に向けて期待感を醸成します。
この時点ではじめてTVアニメが存在したことを知った人も多いのでは。
ここで重要なのは(おそらく)この時点で原作の完結日は決定していたことです。

◯2020年 5月 原作連載終了
掲載誌における完結が話題を呼び劇場版への呼び水となります。

◯2020年 10月 劇場版公開
満を持しての公開。
この時点では原作は完結していますが、単行本は未発売です。
「このマンガって終わってるの?」という会話を多く耳にしたのでは?

◯2020年 12月 最終巻23巻発売
劇場版が空前のヒットを続ける中で満を持して最終巻が発売されます。
書籍としては異例の売り切れ、転売問題などが発生したことも記憶に新しいでしょう。

どうでしょうか。
劇場版公開時には既に原作が完結しており、「もうすぐ最後のマンガも出るよ」と人に勧めることができます。
また原作を読んでいなくても、劇場版が2時間の体験として優れたものであることは保証されています。
さらに、劇場版までのあらすじは、TVアニメ版をネット視聴するなり、原作を読むなりしてキャッチアップ可能です。
全23巻という、昨今のマンガとしては短めに完結していることも、ここでは奏功します。
原作最終話への展開が、やや衝撃的であったことも状況を後押しするでしょう。

映像化開始後の『鬼滅の刃』は、物語の完結自体を起爆剤としてアーリーアダプターを形成、且つ、映画のヒット後は「完結しているので安心して楽しめる」ことを後ろ盾として、キャズムを超え、アーリーマジョリティにまで視聴者を拡大した、と私は見ています。

偶然であろうはずがなく、すべての取り組みは原作の完結をトリガーとして仕組まれていたものと考えます。
これが、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」のヒットに関して、あまりクローズアップして語られていないと感じる、ピースです。

寡聞にして存じ上げないだけかも。
既に大きく論じられていることでしたら、すみません。

■前々から気になっていたこと

閑話休題。
長年の「ジャンプ読み」として、ここ数年気になっていたことがあります。
それはアニメ化の発表と同時に連載終了する作品が増えたことです。
旧来の考え方をすれば、アニメ放送時に原作が終わってしまっていると盛り上がりに欠け、掲載誌からの導線も得られないので良くない、はず。
なので、関係者の皆様には大変失礼ながら、「せめてアニメ開始するまでは終わらないように配慮した」結果であると、私は理解していました。

ただ、どうもそういう話ではなさそう。
紙の書籍と電波による放送、しかなかった時代とはコンテンツのマーケティングも考え方が全く違うようです。

■別の例

ここ数年のアニメ映画のヒット例として、『君の名は。』が挙げられます。
こちらは原作のない劇場アニメなので、最初から体験として完結します。
キャズムを超えることができたのは、これが一因。
原作がないのに劇場版公開時にキャズム超えの勢いを得られた理由は…。
これは、またの機会に。

ひとつ言えるのは、『鬼滅の刃』のように丁寧な「仕込み」をする余裕はないので、いわば出たとこ勝負にならざるを得ないだろう、ということ。
再現性において、劣ることは間違いありません。
たぶん。

■最後に

少し長くなってしまいました。
とっくに言われ尽くしたことに、ご高説をたれてしまった可能性がありますが…。
書いてみることで、自分自身も整理できてよかったです。

この考察を経て、経営者として考えたことはひとつ。
我々の作るゲームはいまのところ「完結してる」ということです。
いわゆる「ソシャゲ(この言い方嫌いです)」は宿命的に完結できません。
完結したエンターテインメントであるからこそ可能なマーケティングがあるはず。

もう少しアタマをひねって、真剣に考えてみたいと思います。

おしまい。

imura

imura

代表取締役

1976年2月、東京都生まれ。B型の水瓶座。
幼少の頃よりファミコンとジャンプに抱かれて育つ。

いつかゲームメーカーを経営することを夢見るモテない少年期を過ごす。
学生時代は麻雀(弱い)と格ゲー(弱い)にまみれて過ごし、2年留年。
恐怖の大王が降ってこないことを確認した後、就職する。

その後、大手ゲームパブリッシャーでのモバイル(フィーチャーフォン)向けコンテンツ事業の経験を経て、2011年春、株式会社GAGEXを設立。

初めて触ったパソコンはPC-8801mkIIFR。
趣味は読書と映画、いずれも最近は摂取する時間なし。

2児の父。