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ヒットの構図 あのXXは何故ヒットしたのか(前編)
こんにちは社長です。
このBlogでは、あまりウンチクを語ったり、訳知り顔で解説したりする記事は書かないようにしたいと思っています。おっさんの講釈なんか聞きたくないですよね?
しかし今回は敢えて。
最近なんとなく考えていることがありまして、自分の考えをまとめる意味でも文章にしてみたいと思います。
■『鬼滅の刃』劇場版大ヒットに思うこと
ゲームやアニメなどのコンテンツを扱っていて、この話題について考えたことがない人はいないのではないでしょうか?
不沈艦かと思われたスタジオジブリの牙城まで切り崩した、その原動力ってなんでしょう?
ここから先、語弊がないように慎重に…震えながら筆を執りますが。
私は、かれこれもう35年近く『週刊少年ジャンプ』を毎週購読し続けています。
告白しますと、15年前くらいからは飛ばし読みしています。
3年前くらいからは、何ヶ月分かまとめて読んでいます。
ただ、とにかく読み続けています。
その前提で敢えて書きますが、『鬼滅の刃』原作は大変優れた漫画ではあると思うものの、「傑作」の域を出るものではないと思っています。
少なくとも、数十年に一度、人の人生を変えるほどのマスターピースであるかと問われれば、首肯しかねるという感じです。
おそらく、私と同世代で原作を読んでいた方には共感していただけるのではないでしょうか。
ここで、作品の評論をぶち上げる気はありません。
「おっさんにはわかんねえんだよ」と言われればそれまで。
提起したいのは「なぜ日本記録を塗り替えるほどの大ヒットが可能だったか」です。
劇場版に限って、のお話。
■何が疑問なの?
主に以下です。
・『ドラゴンボール』や『ワンピース』のように本誌掲載時点で人気絶大だったわけではない
・TVアニメは質も評価も極めて高かったが非キー局での放送で且つ深夜だった
・劇場版はTVアニメ版の純粋な続編であり、その視聴者か原作の読者を前提としている
・劇場版でも物語が完結するわけではなく、重要な山場を迎えるだけ
普通に考えれば日本記録を塗り替える程のヒットにつながる特異点を見つけられません。
むしろ、その逆。
それらを乗り越えた原動力とは?
■イノベーター理論
マーケティングにおける超セオリーのひとつに「イノベーター理論」というものがあります。
60年近く前に作られた理論ですが、今でも基本的な考え方として使われています。
詳細な説明はプロの方の解説サイトなどに譲りますが、簡単に言えば顧客を以下の6つのセグメントにわけて考えます。
イノベーター(革新者) | 2.5% | 情報感度が高く、新しいもの好きで好奇心が強い |
アーリーアダプター(初期採用者) | 13.5% | 流行りや情報に敏感、良いと思ったものはすぐ採用する |
アーリーマジョリティー(前期追随者) | 34% | やや保守的、良いと聞いたものは気になる、流行に遅れたくない |
レイトマジョリティー(後期追随者) | 34% | 新しいものに対して懐疑的、半数以上の人が使い始めると採用する |
ラガード(遅滞者) | 16% | 最も保守的、新しい物に全く感心がない、新しいものを受け入れない |
この理論を補強する理論として提唱された理論に「キャズム理論」があります。
キャズムとは「亀裂」すなわちマーケットに存在する断絶のことで、具体的に言うとアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に横たわっていると仮定されます。
全体の16%を超えた普及をすると、商品は一気にシェアを伸ばす、つまりヒットすると言われます。
俗に「キャズム超え」という言い方をされ、大ヒットを目指す場合ここを超えられるかが分水嶺と考えられています。
■理論からの考察
私が見つけられた最新の数字でみると、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」の観客動員数は
2707万人
です。
当然、ひとりで複数回見た人が多数いるはずですが、そこを無視して雑に計算すれば日本の総人口の約23%に達します。
そもそもの母数を「映画館にアニメを見に行き得る人」と考えれば、キャズムの16%超えは明らかに達成しているといえます。
少なくともアーリーマジョリティを劇場に向かわせるだけのチカラが、どこからか湧き上がってきたわけです。
その源泉はなんでしょうか。
ひとことで言えばそれは、「強力なアーリーアダプター」であろうと考えます。
■アーリーアダプターの形成時期
劇場公開作品は通常数ヶ月で上映を終えてしまいます。
イノベーター理論に従った視点で見れば、できるだけ早期にキャズム超えを果たさなくてはなりません。
上映期間が終わってしまうからです。
では、理想的な「早期」とはいつのことでしょうか?
当然、公開前です。
もっと言えば、「劇場版制作が決まる前」です。
『鬼滅の刃』TVアニメ版は、高い作画のレベルやCGを使った迫力の戦闘、また、原作に対する深い理解と敬愛などから、極めて質の高い優れた作品となりました。
前述したように、決して多くの人が視聴可能な環境で放送されませんでしたが、多くのファンを獲得したことは間違いないでしょう。
TVアニメ版 第一期は約半年間をかけて放映されたとのことですから、後の劇場版での起爆剤となるアーリーアダプター層の形成に時間的余裕があったことになります。
また、TVアニメ版自体にもイノベーター理論を当てはめてみれば、原作漫画のコアなファンをイノベーター、アーリーアダプターとして雪だるま式に視聴者を増やしていったものであろうと考えられます。
原作、TVアニメ、劇場版公開までの流れが大成功を収めたと例と言えるでしょう。
■どうでしょう?
ここまで読んでどう思われましたか?
「そんなもん誰でもわかるわ!」と思いましたか?
そうですね。
わたしも書いててそう思います。
そこまでは、わかるんです。
でも、わからないのはここから先。
考えてみてください。
マンガ原作が人気でTVアニメ化され、その後、満を持して劇場版が公開された作品って…たくさんありませんっけ?
それらが全て大成功するのでしょうか?
そんな簡単だったらみんなやりません?
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が他の類例と決定的に違ったのって、いったいなんでしょうか!?
複数の要因が絡み合っていることは明らかです。
いずれも世の中で言い尽くされたことな気がしますが、1点だけ、気になっているポイントがあります。
そして、このポイントをずばり指摘した文章は見たことがないのです。
それは…また次回!!
後編に続く。
■さいごに
35年間『週刊少年ジャンプ』を読んできた身として、今回の大ヒットについては万感の思いがあります。
わたしの2歳の下の息子は、まだあまり言葉を話せませんが、それでもなんと、主題歌『紅蓮華』を口ずさみます。
文中で偉そうなことを書きましたが、そもそもジャンプはおっさんが読むものではありません。
本当に子どもたちに届き得る作品を作られた関係者の皆様に対して尊敬の念でいっぱいです。
おっさんの御高説など、垂れ流すべきではないのでしょうが…。
ご容赦ください。
これほどの作品が、また! ジャンプから生まれたことに胸が熱くなります。
あと35年読みたいと思います。
やっぱジャンプってすげえや。
imura
代表取締役
1976年2月、東京都生まれ。B型の水瓶座。
幼少の頃よりファミコンとジャンプに抱かれて育つ。
いつかゲームメーカーを経営することを夢見るモテない少年期を過ごす。
学生時代は麻雀(弱い)と格ゲー(弱い)にまみれて過ごし、2年留年。
恐怖の大王が降ってこないことを確認した後、就職する。
その後、大手ゲームパブリッシャーでのモバイル(フィーチャーフォン)向けコンテンツ事業の経験を経て、2011年春、株式会社GAGEXを設立。
初めて触ったパソコンはPC-8801mkIIFR。
趣味は読書と映画、いずれも最近は摂取する時間なし。
2児の父。